人生の糧は人それぞれ

マンガ中心にたんたんと書きます。

草川為「今日の婚のダイヤ」

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2度目のデートで宝くじ売り場に並んだ男とおつきあいで宝くじ1枚を買って早々とおさらばした豊川のぞみ。
容姿端麗で男に困ったことはなく仕事も出来るハイスペックな彼女は、だからこそ結婚相手は自分に相応しい相手であるべきと理想高く求めて気づいたらもう三十手前、狙っていた会社の上司は理解不能な武士のような同僚と結婚して周りはどんどんと結婚していくのに未だに自分が残っていることに焦りを感じてました。

そんな時におつきあいで買ったあの宝くじで見事に前後賞の5千万円が当たります。
このことを両親に報告すると悲しいことに娘がなかなか嫁に行かなくて心配だから自分のために新しい部屋を買ったらどうだろうという提案をされてしまいます。
両親を安心させるためにあくまで今後の保険で提案に応じて部屋を決めた矢先やっと理想的な男性との出会い、その人とのデートにも満足していたところその男性には妻子がいることを知ります。
ようやく手に入れた理想と思っていたのに、騙されていた自分に失望して不本意で購入した部屋の存在に逆に救われてしまいます。
そんな時に偶然あの宝くじデートをしたクジ男に再会します。
あの時は相手を早々と見切ってへのへのもへじにしか見えなかったクジ男とちゃんと接すると、必死でスマートじゃないけど自分のことをカッコいいと言ってくれる彼に悪い気がしなくて、クジ男もそんなに悪くないんじゃないかと、そんなあやふやな気持ちに動かされてまたご飯に行くことします。
クジ男こと久慈栄。
理想とは違う男性。
デートを重ねて相手をちゃんと知る内に駆け引きが出来ない彼の誠実さややさしい人柄に惹かれ始めます。



主人公の豊川のぞみは自分の容姿も能力も良いと自分で認めてますが、それが決して鼻につくような嫌らしさはなく、さっぱりとして好き嫌いがはっきりとした芯の強い女性でとても好感が持てました。
クジ男こと久慈さんも頼りなさそうで実はグイグイと積極的にデートに誘っていて、草食男子のようで隠れ肉食なのがとても良いと思います。


劇的な出会いでもないしドラマチックでもない、今までにないタイプと付き合うことに戸惑ってこの人と一緒になっていいのか確信が持てないのになんとなくだけど、でも確かにある「この人が好き」という曖昧な気持ちを信じて二人で歩んでいこうとする主人公の葛藤や心の揺れ動きにとても共感できました。
きっとどういうことでもそういうもんだろう。
そしてその様子はサラッと描かれていて 、読み終わったあとは「なんか良かったなぁ」とゆっくり噛みしめるような感情になりました。



感想を書くにあたって調べるとどうやら前作があって、前作はオムニバスになっていて今作はその続きものみたいです。
ですが私のように知らずに読んでも全く問題なく楽しめます。
この作品は1巻のみの完結ものになってまして、長い話ではないのがちょうど良く読みやすい作品だと思います。
機会あればぜひ前作のオムニバスも読んでみたいと思います。