人生の糧は人それぞれ

マンガ中心にたんたんと書きます。

喬林知「今日からマ王! 聖砂国編」

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アニメにもなった喬林知さんによる大人気シリーズのライトノベル今日からマ王!」。
挿絵も担当されてる松本テマリさんによってマンガ化もされてます。
聖砂国編は全7巻からなる長編作品になります。

めざせマのつく海の果て!
これがマのつく第一歩!
やがてマのつく歌になる!
宝はマのつく土の中!
箱はマのつく水の底!
砂はマのつく途の先!
故郷へマのつく舵をとれ!


――渋谷有利は正義感の強いただの高校生だったはずが、実は魔族の王・魔王でした。

【ネタバレ注意】
長年鎖国状態だった謎の国・聖砂国と小シマロンが接触するという情報を聞きつけたユーリたちは状況を把握するため小シマロンに乗り込みます。(正確にはユーリとヴォルフラムは勝手に密航。)
そして変に友好的な小シマロンの王・サラレギーのお誘いもあり、偶然居合わせコンラッドと共に聖砂国に行くことになります。


まるマシリーズとの出会いはマンガからでした。
とにかくテマリさんの描くユーリが可愛いんです。
少しおバカですけどまっすぐでお人好しのユーリは小説の聖砂国編でも本領発揮されます。
シリーズの中で何故聖砂国編が好きかと言いますと、今までゆるく楽しいマ王だったのが一転内容がかなりハードになっています。
信頼してたコンラッドの裏切りで疑心暗鬼になり、船内には日本では無縁だった奴隷たち、船旅は荒れ狂う海流の中の航海となります。
しかし聖砂国に着いてからはそれ以上の出来事がユーリをさらに追い詰めます。

ストレスで心身共に疲労困憊の中、王に謁見するために登る階段から見えるのは夕陽で真っ赤に染まる聖砂国の宮殿。
そして待ち受けていたのはサラレギーの裏切りでした。

聖砂国のレジスタンスのボスのベネラに助けられ、話は以前助けた神族の双子のジェイソンとフレディを助ける方向にいきますが、問題はもっと深刻になります。
禁忌とされてる「箱」の存在が分かったのです。

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内容の濃さに劇場版アニメを見てるような気分になりました。
怒涛に襲いかかる出来事のあとに終盤の砂漠での嵐の前の静けさがクライマックスを引き立てます。

ユーリはワケあって唯一頼れる存在がヨザックだけで、コンラッドも信じていいのか分からない、重くのしかかった外交への重圧でギリギリの精神状態で旅することになります。
さらにサラレギーの裏切りや指輪の苦痛に耐えられず自ら手にかけようとするところまで追い込まれますがユーリは自分に堕ちるなと言い聞かせながら強い精神力で踏みとどまります。
そして友の死。
たぶんいろんなことがユーリにとっていっぱいになって耐えきれず視力まで失います。
自分のせいで失ったと責めながらも箱や聖砂国のこともほっとけず前に進むことで王として成長していきます。
望んでもない形で友と対面することになり、吐きそうになりながらコンラッドに心情を吐き出して踏ん張る場面はとても辛かったです。
その後ユーリに黙って自ら人質になろうとしたコンラッドとヴォルフラムに叱咤する姿は王の威厳があるように感じました。

コンラッドは前シリーズの際に自分の決断でユーリの元を離れたものの、ユーリへの愛情は変わらずなので守りたいのに手を出せない葛藤があって、途中ユーリから今だけでも前の関係に戻ろうと言われたときはきっと救われたと思います。
そしてそんなユーリは本当に素敵ですね。

そしてヨザックの存在が欠かせません。
おちゃらけて場を和ますヨザックにユーリも私もかなり助けられました。
以前下に仕える者として良くない行動をしたことを後悔するのをユーリが気にもしてないと許す場面はとても好きなシーンです。
だから終盤の展開はかなりユーリにかなりダメージを与えます。

話は聖砂国の他に、後を追うヴォルフラムとアーダルベルトたち側、村田と兄の勝利が中々戻らない有利の元へ向かうため動く地球側、お留守番のグウェンダル側の話も同時進行してかなり盛りだくさんです。

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まるマシリーズはプリズンブレイク編を最後に作者の病気が原因で新刊は出ていません。
(以前の記事でも同じことを書いてデジャヴ感が。。)

ヨザックはその後の話でさらに辛い状態になるので今後どうなるのかとても気になりますし、眞王とヴォルフラムとの会話も気になってかなり待ち遠しいのです。

正直年数経ってますしそのまま出ないことも覚悟してますが、気長に待つことにします。